「感想」カテゴリーアーカイブ

感想 『近すぎる彼らの、十七歳の遠い関係』 同居から始まる淡い青春


同居から始まる淡い青春

あらすじ・内容

多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー登場。

母と二人で暮らす家で、遠い親戚の女子、和泉里奈と同居する ことになった坂本健一。里奈の控えめな性格や気遣い、女子校育ちの無防備さは、他人との距離に悩む健一に、初めて思春期の性を意識させる。同じ十七歳の女 子と一つ屋根の下で生活していることを友人達にも隠そうとしていた健一だが、幼い頃からの腐れ縁、森由梨子に知られてしまい、彼女との距離感にも微かな変 化がもたらされることに――。多感に揺らめく十七歳を映し出す、恋愛ストーリー。

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親戚だけど遠い親戚で,同居だけど遠い距離感.

なんていうか始終不思議な雰囲気であとがきで作者が言っているように“描写を読む”作品だと感じました.

ダブルヒロインなんですか幼馴染がイイ!
この強気なんだけど距離感つかめなくて暴走しちゃう感じが最高ですね.

淡いしかし梅雨特有のしっとりとした描写なんですか,どこか透明感を残したような読み応えでほんとに雰囲気作りが素晴らしい作品です.

キャラクターたちもいきいきとしているので彼らの青春がどんな着地を見せるのか今から楽しみですね.


感想 『異世界料理道 7』 街の喧騒と狩人の誇り


街の喧騒と狩人の誇り

あらすじ・内容

スン家支配も崩壊し、新たな秩序と目標をもって道を歩み始めた森辺の民たち。新しく縁を結んだ森辺の民たちに『料理』を教えつつも、休んでいた町での商売を再開したアスタ。彼は新メニューを引っ提げ、ついに宿への料理の提供という、大きな第一歩を踏み出すのであった。

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一難去ってまた一難といった感じになりました.

大きな罪が暴かれて一時は落ち着くかと思った波乱が,更に大きな波乱としてキャラクターたちに降りかかりました.

いいなぁと思ったのが断罪の考え方.
今だけと正義では理想は叶えられず,罪が生じた原因と行って起こるこれからのことこそが本質の理解を助ける,そんな教えにしっくりときました.

種族の波乱もまた魅力の一つですが,着々と進む食からの侵攻もまたいい感じになってきましたね.

色恋や料理の可能性などまだまだ気になるところが多いのでいろいろなところにスポットを当てて欲しいところですね.


感想 『我がヒーローのための絶対悪 3』絶対悪の証明


絶対悪の証明.

あらすじ・内容

悪が身を賭して救おうとした正義のゆくえ。 沖名武尊が二代 目ヘルヴェノム卿となり、半年が経過していた。 家族同然の水町佐和子を手にかけ、悪に堕ち続けた事件。月杜MATビルで繰り広げたガイムーンとの激しき 闘争。そして旧リヴァイアサンの元幹部である第一種の怪人ビートリガたちとの殺し合い。 それらの苛烈な闘争を経てもなお、争いは終わることなく、さらに 激しさを増していく。それらを殲滅し取り込んでいく二代目ヘルヴェノム卿は、名実ともに怪人(オルタ)たちを束ねる絶対悪(アルケマルス)となっていた。  すべてはガイムーンを倒すため。幼なじみである天羽ミアをガイムーンの呪縛から解き放つため、武尊は果てなき闘争を続けている。 一方で、正義の化身と して覚醒を続けるミアは本来自身が持ち合わせているヒーローとしての感覚と「正義を行使する」というマインドセットのズレの影響で頭痛に悩まされていた。  そんな止まらない進化を不安に感じているミアの前に、フクロウを模った仮面した怪人が現れ事態を急変させる――。 絶対悪になった少年は果たして最愛の 少女を救うことができるのか。そして悪に堕ち続けた武尊の運命は――。青春ヒーローピカレスクロマン、最終巻!!

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壮大な叙情詩が終わりを迎えたような読後感が清々しい気持ちです.

一人の英雄と一人の悪が交差することによって綺麗なシンクロをはたしていてまるで決められたパズルのピースのような心地よさにつながっています.

キャラクター一人ひとりの“芯”がそれぞれの領域で輝いていて連鎖反応して魅力を増しているイメージです.

ラストバトルも勧善懲悪を見事に皮肉ったジーンとくるシーンになっていてそれでいてしっかりと心に爪痕残すような読み応えを演出していて素晴らしかったです.

彼と彼女の物語は続いて行くでしょうけどこれ以上の描写は無粋でしょう.

安らかなる絶対悪に祝福あれ.


感想 『はみ出し妖精旅団征戦記』 気ままな妖精のロンド


気ままな妖精のロンド

あらすじ・内容

七人の軍団が世界を滅ぼす兵器を持つ国々相手に戦場を翔る――!

かつて世界を支配し滅びた超文明。その兵器「世界装置」を巡り国々が争う戦場を、たった六人で無双する集団があった。妖精旅団と仇名される彼らと、戦争を止めたい王女レッチが出会った時、一大戦記が幕を開ける!

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妖精達のキャラクターがいいバランスでバトルあり駆け引きありの正統派戦記ストーリーといった印象です.

ただそのキャラクター自体はすこし等身大感が足りないなと個人的に思った点と,ヒロインのヒロイン力にもう一声欲しかったのは正直なところです.

国を巻き込んだ大規模な話が1巻からバンバン進んでいる点は良かったです.スカッとするスケール感.

またドタバタな彼らが風土を見出しつつもろもろ奪っていく物語が続いていきそうです.


感想 『強くてニューサーガ 2』 白熱の魔族戦


白熱の魔族戦

あらすじ・内容

超話題沸騰中の“強くてニューゲーム”ファンタジー、待望の 第二章! 滅びの運命を変える為、前世の記憶と実力を駆使して英雄を目指す魔法剣士カイル。王女からの信頼を得たカイルとその仲間達は、使者として鉱山都 市カランを訪れる。しかしそこでは住民の行方不明事件が続発しており、ついには伝説の“魔王殺しの聖剣”を持つ都市長も姿を消してしまう。王女の依頼を果 たし、更には聖剣を手に入れる為に都市長の行方を追うカイル達。そんな彼等の前に、恐るべき仇敵・魔族と邪悪な陰謀が立ち塞がるのだった――

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この作品の最大の魅力は妙に駆け引きにリアリティが求められている点ですね.

だまし騙されと本来味方も敵もどんどん駆使するべき考え方がしっかりと正面から描かれています.

敵一人ひとりもいきいきとしていて,それぞれに芯が通っているので気が抜けず,またそれが駆け引きの臨場感につながっでいます.

ひとつの国を舞台にした戦いが終わり,また次の国へ.

エゲツない主人公達の動向をまた楽しみたいと思います.


感想 『命がけのゲームに巻き込まれたので嫌いな奴をノリノリで片っ端から殺してやることにした 2』 最凶最悪のクズコンビ


最凶最悪のクズコンビ

あらすじ・内容

電脳ランドでのデスゲーム後、様々な人に傷痕を残しながらも 平然と過ごしていた新井和馬。そんなある日、彼は鉄山徹子に孤島で行われるギャンブルゲームへと誘われる。人間の人生をいともたやすく壊す大金を賭け、和 馬と徹子はチーム『クズ』として島へと乗り込むのであった。あの最凶のクズコンビが帰ってきた!! 爽快頭脳バトルサスペンス第2回戦!

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あいも変わらず,二転三転する展開についていったと思いきやゲーム盤そのものをひっくり返された感じの独特な異彩を放つ作品です.

主人公もさることながら,ヒロインの刺すところでは刺す性格が物語のスパイスとして完全に機能している点も見逃せませんね.

単純なルールのゲームを人間に,それもクズ人間にやらせるとここまでドラマが生まれるのかという驚きと,いいぞもっとやれという気持ちに溢れます.

前巻とは違って気になる引き続きのヒキなので,最後まで見届けたいです.


感想 『東京侵域:クローズドエデン 03.人類の敵VS人類の敵』 侵攻こそが意志


侵攻こそが意志!

あらすじ・内容

どれだけ傷ついても、どれだけ絶望に囚われても、戦うことを諦めない。

決死の“東京”侵入で、“スポット”と“ハーメルン”への手 がかりを失った蓮次たち。活路を求める叶方は最後の手段――人気アイドルKANATAとして救務庁に潜入する。しかし、“奪還派”の起こしたクーデターに 巻き込まれ!? 一方、別行動を取る蓮次にも救務庁の刺客が迫り、決死の逃亡劇が始まる。全世界を敵に回しても走り続ける蓮次。命をかけて希望を繋ぐ叶 方。送る者と征く者――二人の魂と絆をかけた戦いが始まる!!

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読み終わってもしばらく興奮が収まりません.

戦いと日常.双方を奪われてかせられた新たな任務は達成困難な茨で埋め尽くされた道.

離れていても深く理解し合い結ばれた二人の絆が最高にアツくクールでなんて言うかもうお前らもっとやれ!と思わず身を乗り出してしまいます.

前巻から引き続きの木村アルテミスちゃんもドギつくて身悶えするほど狂ってて好きすぎます.

繰り返しになりますが何よりも主人公二人のシンクロとそれを追従する息もつかせぬ展開が見事なハラハラドキドキを生んでいます.

読んだあとの高揚感と興奮も他の作品にはない醍醐味でした.

取り戻した希望と反逆のコンテキスト.
ぜひバトンを繋いでほしい作品です.

絶対続巻出してほしいです.


感想 『ゴブリンスレイヤー 2』 ただひたすらに貫く


ただひたすらに貫く

あらすじ・内容

蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー。
圧倒的人気のWeb作品、早くも2巻が発売!

発売後、即大増刷のヒット作『ゴブリンスレイヤー』。
5月25日発売の「月刊ビッグガンガンVol.06」よりコミカライズ(漫画:黒瀬浩介)連載開始!
「どうか、わたくしどもの街を救っては頂けないでしょうか」
「救えるかどうかは、わからん。だが、ゴブリンどもは殺そう」
ある日、ゴブリンスレイヤー指名の依頼書が冒険者ギルドに届いた。
差出人は水の街――辺境一栄える至高神の都の大司教だった。
大司教はかつて魔神王を打ち倒した金等級の一人として、剣の乙女と呼ばれる英雄でもあった。
彼女いわく、水の街の中に何故か小鬼が出るという。
ゴブリンスレイヤーは妖精弓手、女神官、蜥蜴僧侶、鉱人道士とともに水の街の地下迷宮に挑む!
「この小鬼禍は、人為的なものだ」
蝸牛くも×神奈月昇が贈るダークファンタジー第2弾!

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ゴブリンを倒す背中がたくましすぎてカッコイイ.

凄惨を極める醜きゴブリンが本当に邪悪に描かれていて恐怖を覚えるレベルです.

それを考えて考えて工夫して工夫して虐殺をする主人公がある種狂っている感じなんですが,相変わらずその背景が言動の重みと説得力につながっている構成でアツくなります.

キャラクターも固有名詞ではないものの個性がかなり豊かでコロコロ変わる表情と言葉に楽しくなります.

前巻は1巻完結のような展開でしたが今回は伏線もたくさん出てきていよいよ世界観が広がっているので,またその芯で貫いているところをどんどん読んでいきたいですね.


感想 『精霊幻想記 4』 流転する異世界


流転する異世界

あらすじ・内容

両親の故郷カラスキを出立したその足で、ラティーファたちの待つ精霊の里を訪れたリオ。里の民たちから熱烈な歓待を受けた後、情報収集目的でシュトラール地方へと向かったリオは、その道中に見かけた巨大な光の柱に導かれ、奴隷にされかけていた三人の男女を助けるのだが――なんとその中の一人は、リオの前世である天川春人の初恋の少女で!?

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すでに何人か現世からの異世界召喚者がいることが明かされていましたが,この巻で一気に事態が進んだ感がありますね.

戦闘がどれもサクッと終わっているのがあっさりしていたのは残念でしたが,その分今後の大きな伏線だったりキャラクターの機微だったりが細かく描かれているのでそこは良かったです.

ようやく強敵っぽい人が現れたり,え,あの人が!?といったキャラクターがチラッと出てきたりと今後が楽しみになる要素が満載でした.

ただ,せっかくの異世界なのでより世界観が広がっていくような展開を今後も期待したいと思います.


感想 『命がけのゲームに巻き込まれたので嫌いな奴をノリノリで片っ端から殺してやることにした 1』 最悪最高の後出しジャンケン


最悪最高の後出しジャンケン

あらすじ・内容

新井和馬は気が付くと見知らぬ空間にいた。突如現れた「ナナ シ」により、クラスメイトや教師たちと生き残りを懸けたゲームをさせられることを知った和馬は、超高校級の女優・鉄山徹子をパートナーに、その頭脳を武器 に嬉々としてゲームに臨むのであった。第9回HJ文庫大賞「大賞」受賞作が満を持してついに登場!

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こういった作品が大賞を取ること自体がクールすぎです.HJ見直しました.

バトルロワイヤルでゲームを通して殺し合えーな作品でライトノベルでは割と昔からある題材ではあるものの,作者のセンスとキャラクターの言動でしっかりと唯一無二な作品に仕上がっています.

まず最後のゲーム以外は非常にルールがシンプルで,だからこそキャラクター同士,さらには読者に対してもフェアな空気が出ている点がとても良かったです.

また主人公が最高.いや最低か.

どこまでもひん曲がった芯が魂の中心をビシぃと貫いていて見ていて気持ち悪いほどにいい味出してます.

エンターテイメントとして成立させること自体が難しい題材と思ってますが,読みやすさや爽快さを演出する工夫が随所に勝手ながら感じました.素晴らしい.

しかもこれ続巻あるんですね……難しいでしょうがぜひ追いかけたいと思いました.

だけどこれ,個人的におすすめできる人が本当に限られますね!