辺境の地であたたまる
大きな戦いのあとに訪れる安寧でも語るべき物語はあるんですね.
邪竜退治のあとの町おこし.いろいろなトラブルがあってもどこかほっこりするシーンが続きました.
主人公の周りだけでなく主人公も自分の物語を一歩先に進ませたのが読者としても一緒に喜べるような,そんな素敵なお話でした.
寓話のようなかといってそれほどくだけない不思議な雰囲気を持った作品だなと再確認しました.
宿命は終わらず 社畜に休息なし
前巻から打って変わって箸休めのような助走のような巻と思いきや100メートルを全速力で走るようなスピードで助走してますこれ.
ヒロインたちと主人公の関係が変化する中で変わらないことと貫くことの大切さをどこかで伝えてくれるような印象を受けました.
大人になって社会人になってようやくわかる社会の仕組みと理不尽と子供の時の夢だったり純粋な気持ちが若さあふれるキャラクターと大人,現在と過去の対比で見事に描かれています.
ヒロインたちの成長も見どころなのですがそれに引っ張られる形で主人公も少しずつ何かと向き合えるひたむきさを出していくのがほっこりします.
エピソード的には助走なのですがとんでもない展開になってきました.
恋と夢,理想と現実.
宿命の“対決”がどのような結末を迎えるのかをしっかり追いかけたいと思います.
現実は非情 だからこそあがく価値がある
職業モノの一番濃い部分を更に濃縮してぶつけてきた実質の最終巻ですかね.
初っ端から学生読者を置き去りにする展開と描写に圧倒されます.
次々に主人公たちに訪れる新たなハードルを知力と人脈,時には社内政治や相手のメンツすら利用してなりふり構わず進んでいく彼らの生き様がひたすら先輩社会人としてカッコイイです.
それぞれのキャラクターたちもここぞとばかりに見せ場があり最終巻に相応しい立ち回りだったのではないでしょうか.
恋愛面での進展が全くないので後日談エピソードなどをリアルに所望したいです.
この作品はいわば社会人への讃歌なのですが安直なそれだけでなくリアルな負の側面やあまり良くない人間関係なども描くところで,苦しいところからそれでもあがいていく現代人へのエールでもあった気がします.
このような傑作が終わることを寂しがりつつまた彼らと何処かで出会える気もします.
目まぐるしく変わる戦場
緻密な策略とそれぞれの思惑が組み合わさることでとんでもない化学反応になります.
細かい機微や人を手のひらの上でいかに踊らせるかみたいなところを地で行くような描写の細かさにスケール感が合わさってものすごい豪快かつ繊細な作品になっています.すごい.
1巻の頃の主人公の頼りない感じはなりを潜めていて軍師として恐ろしいレベルになってます.
戦場も目まぐるしく変化していますが,そこでうごめいている人に注目したいですね.誰も彼もときに利己的でときに信心深く,敵やときに味方まで出し抜こうとします.そこがいいんですよね.
ヒロインがやけに乙女になったり,対抗馬はイジイジしていたりと恋愛面も気になります.
今後もまだまだ物語がスケールアップしそうなのでそこを考えつつ,物語を構成する人物たちそれぞれの思惑による掻き乱しにも期待したいと思います.