「新作」カテゴリーアーカイブ

感想 『トリア・ルーセントが人間になるまで』 まるで児童文学


まるで児童文学


悲しかったり嬉しかったり喜怒哀楽はあるけど,それを上手に優しさでラッピングしたようなお話でした.

王様を救うための薬は実は人間の女の子で主人公は彼女を父親のもとに送らなくてはならない王子という胸キュン設定.

ファンタジー要素もこってりさずに控えめで主にヒロインの可愛さと成長,主人公の考えを楽しむタイプ.

キャラクターも少ないので話が理解しやすくきちんと起承転結になってるのでとても読みやすかったです.

続きは出そうと思えば出せる伏線が幾つか登場しますが,この1巻単体でも十分楽しめます.


感想 『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』


切ない恋の戦いの行方


対比的に語られる科学の国と魔法の国のそれぞれのポジションの主人公とヒロインが戦い合う運命なのにもかかわらずプライベートで意図せず距離が縮んでしまってドキドキワクワク……たまりませんこのシチュエーション!

主人公が強い上に適度な等身大感が残っていてそこが魅力ですしヒロインがとにかくかわいい.

それぞれが抱える背景と国の責任が二人の恋の邪魔であり根底でもあるところが切なくニクい演出をしています.

他のキャラクターも掘り下げがいのありそうなキャラばかりで楽しみですね.

いよいよ本格化しそうな戦争とそれぞれの内部の陰謀.

主人公とヒロインの関係にやきもきしつつ彼らがそれにどう立ち向かうかが楽しみでもありますね.


感想 『せきゆちゃん(嫁)』 急転直下の石油押し


急転直下の石油押し


石油(美少女)をほりあてててんやわんやのラブコメディ.

石油ほりあてて金持ちになるって字面だけなら夢があるんですが準備や流通に途方もないハードルと運も必要なのに,そこは適度にファンタシーにしつつ作者の言う通りきれいにボーイミーツオイルにまとめています.

ヒロインのせきゆちゃんの造形がとてもしっかりしていてとにかくかわいい.

ストーリーどころかところどころのシーンと台詞回しですらツッコミどころ満載でそれを楽しむ作品です.

続くとしたら新キャラテコ入れでしょうしドタバタ劇がまた楽しめそうですが随所のアブラネタがものすごい勢いで出てくるのでストックが尽きないか逆に心配ですね.


感想 『友人キャラは大変ですか?』 友人というなの概念存在


友人というなの概念存在

あらすじ・内容

出会っちまったぜ、俺の理想の主人公に!

俺の友達、火乃森龍牙。高校に入ってできた、気の置けない親友。

龍牙の第一印象は、「アニメとかに出てくる主人公っぽい奴」だった。そしてその思いは、すぐに確信に変わった。
まず、こいつは過去をほとんど話さない。で、よく授業を抜け出す。帰ってきたかと思えば、唇から血を流してたり、制服のあちこちが破けてたりする。

そして龍牙の周りには常に美少女がいる。学園のアイドル、雪宮汐莉。剣の達人であるクールビューティー、蒼ヶ崎怜。謎の転校生、エルミーラ・マッカートニー。こいつらが龍牙の前に現れると、俺は非常に疲れる。それぞれが龍牙と絡むたび、「お、おいリューガ! どうしてお前が雪宮さんと知り合いなんだよ!」とか、「う、麗しの剣士である蒼ヶ崎さんが、わざわざ教室までリューガに会いに!?」とか、「エ、エ、エルミーラさん! リューガなんかのドコがいいんスかぁ!」とか、必死に騒ぎ立てる羽目になるからだ。

……じゃあ何でやるのかって? それは俺、小林一郎が友人のプロだからだ。
主人公の中の主人公、火乃森龍牙を支える親友キャラこそが、俺の生き様だからだ。

――ベストフレンダー小林が贈る名助演ラブコメ、開幕!


日常と非日常が交差する異能バトルライトノベルで一人だけとんでもない次元で戦っている主人公本当にすごい.

この作品の文脈はどれだけ「友人キャラ」もとい自分自身の役割を全うするのかという主題に素晴らしいアプローチをしています.

キャラクターたちは無自覚にそれぞれの役割をこなしています.主人公,幼馴染,吸血鬼,巫女などキャラ付すればいくらでも出て来る中一生懸命ですよ.

しかしこの作品ではメタフィクション的にそれを俯瞰した視点で動き回れるキャラクターを用意することでびっくりするくらいコミカルで奥が深い物語にしています.

とんでもない設定や新キャラがどんどん出てくる中で友人キャラという役割にしがみついて四苦八苦する主人公いや友人の切磋琢磨は見ているだけで面白いですし意図しないところで色々なフラグを立ててしまっているところも笑えます.

メタフィクション的な表現の新たな極地であるこの作品は本当にユニークですね.


感想 『この世界がゲームだと俺だけが知っている 1』 バグと困難の哲学


バグと困難の哲学

あらすじ・内容

迫りくるバグ! 襲いくる理不尽! そして、それを覆す圧倒的台無し策!!

“ぼっち”ゲーマーの相良操麻(さがらそうま)はある日、悪名高いバグ多発ゲームの世界に入り込んでしまう。
「理不尽」と「運営の悪意」を具現化したような通称<猫耳猫>の世界でバグ仕様を逆手にとったソーマの冒険がはじまる!

 

困難は困難であればあるほどひっくり返したときが最高……まさにそれ!

ゲームの世界に転生というたまにあるシチュエーションですがそこは悪意の塊のようなとんでもないイベント,キャラクター,アイテム……そしてバグのオンパレード.

そんな中でも主人公は芯を持って行動し既知であってもちゃんと慌てたりわいわいやる様子が本当にこのゲームが大好きだということが伝わってきてかなり好感が持てました.

他のキャラクターも生き生きとしていながらも“ゲームのキャラクター”であるという個性を残している点に注目ですね.役割をこなしてしっかり物語を回していく役目といいますか,そのバランス感覚が良いです.

舞台を変えてまだまだ波乱が待ってそうです.

バグ使いの今後の素晴らしい冒険を祈っていこうと思います.


感想 『とんでもスキルで異世界放浪メシ 1 豚の生姜焼き×伝説の魔獣』


何でもありの通販

あらすじ・内容

――その男、異世界の胃袋を鷲掴み!!

現代日本から剣と魔法の異世界へと召喚された向田剛志。どんな大冒険が待っているのかと思えば、実はムコーダは「勇者召喚」に巻き込まれただけの一般人だった! そんなムコーダの初期ステータスは正規の勇者(3人もいる!)に比べてかなりしょぼい……。さらにムコーダたちを召喚した王国がうさん臭く、「あ、これ勇者を利用しようとするやつだ」と察して一人城を出るムコーダ。この異世界でムコーダが唯一頼りにできるのは固有スキル『ネットスーパー』――現代の商品を異世界に取り寄せられるというものだけ。戦闘には向かないが、うまく使えば生活には困らないかも? と軽く考えていたムコーダだったが――? 実はこのスキルで取り寄せた現代の「食品」を食べるととんでもない効果を発揮してしまうことが発覚! さらに、異世界の食べ物に釣られてとんでもない連中が集まってきて……!?
「小説家になろう」年間1位のとんでも異世界冒険譚、ついに登場!

とんでもスキルで異世界放浪メシ 1 豚の生姜焼き×伝説の魔獣
異世界の通貨でネット通販が使えておまけに食材にバフが乗るというチートモノ.

料理描写がクドくないバランスでちゃんと美味しそうに感じる点が良かったです.

キャラクターもさっぱりしてますが神狼と女神がコロッと食べ物で陥落するあたりがコミカルで面白いですね.

経済的にも能力的にもかなりやばい能力なんですがお気楽な主人公が全能感を和らげていて良い塩梅です.

改めて思う日本のネット通販ほんとヤバすぎる.

またいろんなキャラクターが食べ物で陥落するさまが見れそうなのでそこが楽しみな作品です.


感想 『86―エイティシックス―』 自由の果ての自由


自由の果ての自由

あらすじ・内容

第23回電撃小説大賞《大賞》受賞作、堂々発進! 最終選考委員と、編集部一同をうならせたエンターテイメントノベルの真・決定版!

サンマグノリア共和国。そこは日々、隣国である「帝国」の無人兵器《レギオン》による侵略を受けていた。しかしその攻撃に対して、共和国側も同型兵器の開発に成功し、辛うじて犠牲を出すことなく、その脅威を退けていたのだった。 そう――表向きは。 本当は誰も死んでいないわけではなかった。共和国全85区画の外。《存在しない“第86区”》。そこでは「エイティシックス」の烙印を押された少年少女たちが日夜《有人の無人機として》戦い続けていた――。死地へ向かう若者たちを率いる少年・シンと、遥か後方から、特殊通信で彼らの指揮を執る“指揮管制官(ハンドラー)”となった少女・レーナ。二人の激しくも悲しい戦いと、別れの物語が始まる――!


安全な場所にいる差別の加害者と死と隣り合わせにいる被害者との交流を通して明かされる世界の謎,喪失と絶望,そして自由とは何かを考えさせる哲学的なテーマ……大変楽しめました.

人を人扱いしないことで精神的にもリソース的にも問題解決した内陸の人々がいかに堕落しているのをありありと描写することで行動的には相当束縛されている外の兵士たちの生き生きとした表情が際立つようになっています.

ヒロインと主人公の交流で様々な事実が明かされていくのですがそれが本当にわくわくする内容で毎回新鮮な驚きがありました.

どうしようもない状況の中なのでキャラクターたちは一様に重々しいものを背負っているのですがそれを吹き飛ばすような強い意志,生命力に溢れていて読んでいて気持ちよかったです.

差別する側とされる側……果たしてどちらが自由で高潔なのか……エピローグは必見です.

この一冊で完結してはいるものの続きも出るようなので大変楽しみにしています.


感想 『境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神』 夫婦の進む道


夫婦の進む道

あらすじ・内容

「私はあなたの妻です」と、創造神(かのじょ)は言った。

鬼柳怜生・享年17歳。彼の生涯は双子の姪をかばって儚く幕を閉じた……はずだった。死者蘇生すら可能な力を手に生き返った怜生。世界を一変させる存在となった彼の、全世界を相手にした戦争が幕を開ける――!

非常によくねられた設定と生き生きとしたキャラクター.

主人公もまさに王道を行く正義感があって等身大なのに何処か執着的なタイプ.

丁寧なバランスの良い描写の中にもオリジナリティあふれるやり取りや世界の広がりが感じられて読んでて楽しかったです.

ヒロインがウザい点は賛否両論ですが今後いろいろなキャラクターが追加されることを考えるとこれくらい目障りな感じがちょうど良いかも.

魔術でどうしてもやり抜きたいこと,それを見つけた主人公がどのような覇道を突き進むのか.

まだまだ見どころはたくさんありそうですね.


感想 『リア充になれない俺は革命家の同志になりました 1』


スクールカーストという残酷で美しい題材

あらすじ・内容

スクールカースト最下層に位置する白根与一は廃部をハンストで抵抗する部員の監視役として図書部に入るよう命じられる。部室では、純真可憐な美少女・黒羽瑞穂が待っていた。その姿に反し、彼女の口からは過激思想発言が止まらない。その中の一つ、スクールカースト粉砕計画に白根は心を動かされ、気がつけば彼女の理解者に? カースト一軍のリア充で黒羽の幼馴染み中禅寺さくらを交え、おかしな図書部の活動が始まる!?

スクールカーストを体制側の一つの問題として扱いながらもそれによって翻弄される少年少女の一喜一憂をコミカルに描いた作品でした.

特殊な単語がたくさん出てきますが主人公のツッコミスキルが優秀なのでとくに引っかからずにスラスラ読めました.

この頃の時代って小さなほころびでも人間関係や生活に大きな傷を負いやすい……だから愛しいと感じるまさに黄金時代なんですよね.

ヒロインがピーキーなんですが宇宙人に感じることなくあくまでこの時代をもがき苦しんで進んでいる一人の女の子に見えたのでそこの造形も良かったです.


感想 『俺たちは異世界に行ったらまず真っ先に物理法則を確認する』


高専生のドヤ顔

あらすじ・内容

これは、後に魔法技術の礎を築き上げた賢者たちの物語――。

高等専門学校、高専に通う幸成たち12名の学生たちが目を覚ますと、そこは異世界でした。ロボコペ優勝を目指してガレージで徹夜作業をしていたはずの彼らが、まず行ったのは……物理法則の確認! 摩擦、空気抵抗、重力、電気抵抗と、自分たちの知識を駆使して、その土地を調べ上げるメンバー。ひとまず生命が活動することができることを確認した彼らは、これから始まるサバイバル生活に落胆することしかできず……。しかし、森で廃棄されていた魔道具【マジックアイテム】を拾ったことで、彼らの運命は大きく動き始める――!

オタクなどのマイノリティーに属している側の人間はたまに周りに発散してもらいたくなるものです.

持っている知識を思う存分に開陳したい,そして自分に最大限注目して理解して認めてほしい……こんな欲求です.

この作品はそうした欲望が合致した人にとってはかなりの精度で満たされるようにできていますね.

それぞれのキャラクターの苦悩もそれに即した内容になっていてシンパシーを感じやすくなっていて丁寧な作りです.

次の展開でどんな知識が披露されるのか,そんな楽しみ方が出来そうですね.