「新人賞」タグアーカイブ

感想 『86-エイティシックスー』 自由の果ての自由


自由の果ての自由


安全な場所にいる差別の加害者と死と隣り合わせにいる被害者との交流を通して明かされる世界の謎,喪失と絶望,そして自由とは何かを考えさせる哲学的なテーマ……大変楽しめました.

人を人扱いしないことで精神的にもリソース的にも問題解決した内陸の人々がいかに堕落しているのをありありと描写することで行動的には相当束縛されている外の兵士たちの生き生きとした表情が際立つようになっています.

ヒロインと主人公の交流で様々な事実が明かされていくのですがそれが本当にわくわくする内容で毎回新鮮な驚きがありました.

どうしようもない状況の中なのでキャラクターたちは一様に重々しいものを背負っているのですがそれを吹き飛ばすような強い意志,生命力に溢れていて読んでいて気持ちよかったです.

差別する側とされる側……果たしてどちらが自由で高潔なのか……エピローグは必見です.

この一冊で完結してはいるものの続きも出るようなので大変楽しみにしています.


感想 『境域のアルスマグナ 緋の龍王と恋する蛇女神』 夫婦の進む道


夫婦の進む道

非常によくねられた設定と生き生きとしたキャラクター.

主人公もまさに王道を行く正義感があって等身大なのに何処か執着的なタイプ.

丁寧なバランスの良い描写の中にもオリジナリティあふれるやり取りや世界の広がりが感じられて読んでて楽しかったです.

ヒロインがウザい点は賛否両論ですが今後いろいろなキャラクターが追加されることを考えるとこれくらい目障りな感じがちょうど良いかも.

魔術でどうしてもやり抜きたいこと,それを見つけた主人公がどのような覇道を突き進むのか.

まだまだ見どころはたくさんありそうですね.


感想 『俺を好きなのはお前だけかよ』 化けの皮が剥がれる瞬間


化けの皮が剥がれる瞬間

あらすじ・内容

最近のラブコメは凄すぎだろ。よりにもよって、お前だけが俺を好きなのかよ!?

こ こで質問。ある日突然、複数の美少女とラブコメイベントが発生したらどうする? もちろん迷わずラッキースケベるよね? でも、もしスケベると自分の人生 が終わるとしたら……どうする? 俺こと如月雨露は、今その状況にいます。「一人の男が、何人もの女の子とバカップルのようなことをする。それなのに、特 別な関係じゃないと言い切る。これで周りに納得してもらえるのは、ラブコメの主人公ぐらいですよ?」 そういえば俺はモブだった! 俺がラブコメの主人公 だったら、許されたのにぃぃぃぃ! つーか、可愛い系幼馴染みのひまわりとクール美人なコスモス会長の二人とは、『あの一件』で気まずい関係になったの に、なんで俺はひまコスと、こんなラブラブ体験してるんだ!? 相変わらずエスパーな根暗眼鏡少女ことパンジーよ、お前はまざってこんでええ。俺は今もお 前のことは大っ嫌いだから。彼の身に一体何が!? 一年前の高校野球地区大会決勝戦にまつわる真(新)ヒロイン?も登場し、予断は許さぬ第二巻!

青春期の少年少女が腹の裏で抱えている汚いところとか純粋なところとかがにじみ出ていたところが良かったです.

三人ヒロインが出てそれぞれに裏の想いや何よりも“至らなさ”があってそれがとても彼女たちの魅力を増しています.

また親友のサンちゃんが憎めないんですよね.ある意味彼が狂言回しのように立ち回ったお陰で物語がグッと深いものになりました.

主人公もいい.

適度に等身大で,打算的で,曲げないところは曲げないのが良いですね.

今後も一方通行な恋の模様が描かれていきそうな作品ですが,他のヒロインをもっと深堀してほしいですね.


感想 『イグニッション・ブラッド』 鮮血の激闘


鮮血の激闘!

あらすじ・内容

人類の存亡をかけた戦場で、若き英雄の銀刃が閃く――!!

かつて吸血鬼と呼ばれた種族〈至高の血族〉――彼らに対抗する部隊エクイテスに所属する十影は、圧倒的な戦闘力をもって至高の血族を畏怖させる若き英雄だった。だが、異端の少女との出会いが彼の運命を一転させる!

種族感の確執とロマンスとバトルが見事にバランス良く配合された物語でした.

キャラクターも女性陣は生き生きとしてますし,男性陣もひとクセもふたクセもありそうな塩梅でこれから先も波乱が起きそうです.

テーマ的にはもう少し敵陣営の背景を濃く描いてほしかったですね.

人間と吸血鬼の種族を超えた絡みと,そこで生まれる軋轢なんかも楽しめそうです.

そういう意味ではダブルヒロインみたいな構成はなかなかうまいですね.片方が弱過ぎるのが気になりますが……
今後もバランス良い展開を期待します.


感想 『アサシンズプライド 暗殺教師と無能才女』 可愛い生徒に腹黒教師


可愛い生徒に腹黒教師の合わせ技.

あらすじ・内容

暗殺教師の矜持にかけて――少女の存在価値を世界に示せ

貴族のみが化物と戦う力・マナを持つ世界。青年クーファは、公爵家に生まれながら無才の少女メリダの才能を見出すため、家庭教師として派遣される。彼女に才能がなければ、暗殺――という、裏の任務を負って……。

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ものすごくデジャブを感じましたが何のその.
すごくスカッとする展開で楽しめました.

ヒロインの落ちこぼれ設定は何かと腑に落ちませんでしたが,先天性のビハインドを打ち崩す過程が良かったですね.

ただ彼女の可能性の高さをもう少しうまく丁寧に見せて欲しかったのが正直なところです.

後は世界観の広がりがかなり壮大なのでそこがファンタジア文庫の色にマッチしている気がします.

次は脇役に焦点を当てて他のキャラがイキイキしているところも読んでみたいですね.


感想 『ラン・オーバー』 スクールカーストを瓶底から眺めて


表紙詐欺と普通に思いました.

あらすじ・内容

湊里香が転校してきてから、クラスは一変する。いじめのター ゲットにされても動じない彼女はあるとき伊園を呼び出した。湊に秘密を知られた伊園は、言われるがまま同棲生活をスタートさせる。不思議な彼女は伊園にあ ることを提案する。それはいじめのリーダーカップルに反撃すること。はじめは気乗りしなかった伊園も、次第に湊の意見に賛同するようになる。いじめのター ゲットの原を巻き込み、三人の過激な反逆が始まる。

 

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いじめ復讐モノって何冊か読みましたがラノベではほとんどガガガ文庫の領域だと思ってました……
スクールカーストを瓶底から眺めている気持ちにもれなくありつけますが,後味は当然良くないです.
ただ復讐される側が本当に救いようのないやつらなのでいろいろ飲み込めるという感じ.
ドス黒い思春期の感情を集めてそのままどこかに放置したような突き放し方もどこか哀愁漂ってます.
犠牲になった彼らにも救いは来るのでしょうか.